至誠会第二病院 shiseikai daini hosp

東京都指定二次救急医療機関
東京都災害拠点病院

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人工関節センター

Artificial Joint Center

ご挨拶Message

整形外科診療部長・人工関節センター長

辻 耕二 Koji Tsuji

整形外科診療部長・人工関節センター長

辻 耕二Koji Tsuji

股関節や膝関節に関して短期入院・早期社会復帰を目的とした、小さな傷で筋肉を切らない最小侵襲人工関節置換術(特に股関節)を専門として診療を行っています。手術を悩むあまりに適切な時期を逃してしまい、より強い変形に進んで難しい手術になってしまう患者さんが多くみえます。手術の技術だけでなく、股関節や膝関節の痛みに悩む患者さんが、まずは受診し適切な診断を受けられる場所にしたいと考えています。痛みや動きの制限で日々の生活に困り、何かやろうと考えても思いとどまってしまうのであれば、痛みのない生活に戻ることを考えてみてはどうでしょうか? 

当科の概要Overview

股関節や膝関節に関して、痛みや動きの制限などご自身の症状をいつまで我慢しますか?
病気の進行度や症状にあわせた治療を受けることができます。

症状が軽く関節の変形が進行していない場合

お薬や注射、リハビリなどの保存療法で症状を緩和することができます。

痛みや動きの制限が強く関節変形が進行している場合

人工関節手術を受けることも考えてみてはいかがでしょうか?

なぜ痛みがある関節の
治療を受けるのか?
  • 痛みのない楽しい生活に戻るため
  • 健康な生活を過ごすため
  • 生活の質を向上させるため
  • ロコモティブシンドロームなどを予防するため
現在の人工関節手術の利点
  • 安全な手術と麻酔で身体への負担が少なくなっている
  • 小さな傷で筋肉を切らない手術ができるようになった
  • 手術に伴う合併症が少なくなった
  • 1-2週間で自宅退院が可能になっている
  • 手術当日から歩行やリハビリが始められる
  • 早期社会復帰が可能になっている
  • 入院期間は数日から1-2週間
  • 術後早期から歩行訓練度のリハビリを開始する
  • 麻酔や痛み止めの改善で、術後の痛みが少なく快適になった
人工関節センターの診察・手術の流れ

初診:現在の症状、今までの治療経過などをお聞きし、痛みの程度、動きの制限、筋力の状態を評価したうえで、レントゲンによって変形の程度を確認します

  • 保存治療で対応できる場合は、痛み止めの処方やリハビリの方法を説明します
  • 地域連携している整形外科クリニックでの治療をお勧めし、紹介することもあります
  • 手術が望ましいと診断された場合は人工関節手術の利点や注意点をお話しするとともに、資料をお渡してご家族と相談いただき、今後の予定やご自身の生活環境を整えるよう準備を始めます

手術を受けることになった患者さんのスケジュール

約1ヶ月前

術前検査を行います(血液検査、尿検査、心電図、レントゲン、CT検査など)

1-2週前

自己血貯血(股関節は1回400gr、膝関節は通常無し)

手術前日

入院

手術当日

術後数時間はベッド上安静。午前中に手術が終わった患者さんは、夕方、座位や立位、見守りでの歩行器歩行練習を開始します

術後1日目

歩行器を使って歩き、安定すればトイレ歩行は自由です。T杖歩行を練習します

術後3日目

T杖歩行の自立を目指します

術後5日目

杖無し歩行も練習します。階段の上り下りを練習します

術後7-10日頃

歩行が安定してきたら退院です。通常抜糸はしません
体内の組織・インプラントが安定する術後1-2ヶ月は外歩きでは基本的に杖の使用を推奨しています

術後1-2ヶ月

体内の組織・インプラントが安定するまでは外歩きでは基本的に杖の使用を推奨しています

退院後から

シャワー、飲酒、デスクワーク

術後4週

入浴、車の運転、立ち仕事、しゃがみ込み、自転車、正座(股関節の場合)

術後6週

中程度の肉体労働、スポーツ活動、混雑した電車通勤

退院後1ヶ月目

初回の外来診察。採血やレントゲンなど行います

定期受診

術後3ヶ月、半年、1年、2年、3年目以降を目処にレントゲン評価などを行います

人工股関節置換術について
1.人工股関節置換術(Total Hip Arthroplasty:THA)
人工股関節置換術は、股関節のすり減った軟骨と傷んだ骨を切除し、金属やポリエチレン、セラミックでできた人工股関節に置き換える手術です。人工股関節はカップ、骨頭、ステムからできており、カップの内側にライナーがはまるようになっています。骨頭がライナーにはまることで、滑らかな股関節の動きが再現します。
痛みの原因となるすり減った軟骨と傷んだ骨を人工股関節に置き換えることにより痛みを取り除き、日常生活の動作が楽になることが期待できます。また、痛みだけではなく、股関節の可動域制限や左右の下肢の長さに伴う歩行障害など、動作の制限となっている原因を取り除くことで日常生活が楽になります。
<人工股関節置換術の対象になる疾患>
  • 臼蓋形成不全・変形性股関節症
  • 大腿骨頭壊死症
  • 関節リウマチ性股関節炎
  • 大腿骨頚部骨折
  • 大腿骨頚部骨折後偽関節・骨癒合不全
<当院で行っている人工股関節置換術(THA)の特徴>
  • 筋肉を切らない小さな手術創での最小侵襲手技
    ・10cm以下の皮膚切開で筋肉を極力切離しない
    ・皮膚割線に沿わせた皮膚切開により、術後、より目立ちにくい手術創
    ・前外側進入(中殿筋と大腿筋膜張筋の間から筋肉を切らない手術)
    ・正確なインプラント設置を目的とした仰臥位での手術
  • 原則、骨セメントを使用しないノンセメント型人工関節を選択
  • 摺動面は高架橋ポリエチレンライナーとセラミックス骨頭を使用
  • 仰臥位、横皮切による前側方進入(MIS-AL Supineアプローチ)手術
2.人工膝関節置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)
人工膝関節置換術は膝関節のすり減った軟骨と傷んだ骨を切除し、金属やポリエチレン、セラミックでできた人工膝関節に置き換える手術です。大腿骨、膝蓋骨、脛骨のインプラントからなります。これらのインプラントが組み合わさり、滑らかな股関節の動きが再現します。
痛みの原因となるすり減った軟骨と傷んだ骨を人工膝関節に置き換えることにより痛みを取り除き、日常の動作が楽になることが期待できます。また、O脚(もしくはX脚)に変形し、伸びない・曲がらないで日常生活に支障をきたした膝関節を、人工膝関節に置換することで出来るだけまっすぐな下肢、曲げ伸ばししやすい膝に矯正します。
関節の内側のみに限局する変形や痛みのよっては単顆型人工膝関節置換術(Unicompartmental Knee Arthroplasty:UKA)も適応になります。
<人工股関節置換術の対象になる疾患>
  • 変形性膝関節症
  • 大腿骨顆部壊死症
  • 関節リウマチ性膝関節炎
  • 膝関節周囲の骨折の一部
<当院で行っている人工膝関節置換術(TKA)の特徴>
  • 筋肉を切らないアプローチによる手技
    ・サブバスタスアプローチ(大腿四頭筋を切開しない手術)
  • 原則、骨セメントを使用しないノンセメント型人工関節を選択
  • 摺動面は高架橋ポリエチレンライナーを使用
  • キネマティックアライメント法
    ・膝関節症になる前の自然な脚の形にできるだけ近づける手術
    ・表面の傷んだ部分だけを切除して、金属等に表面置換する
    ・患者さんそれぞれの靱帯などのバランスは温存する

従来の人工膝関節はできるだけ長持ちさせるために、大腿骨頭(だいたいこっとう)の中心と足首(足関節)の中心を結んだ直線に対して膝関節平面が垂直になるような場所に人工関節を設置することが推奨されていました。しかし、キネマティックアライメント法では患者さんごとに異なるその人の膝関節に合ったアライメントを実現するため、術後の違和感が少なく、人工膝関節置換術後の痛みの軽減、患者満足度の向上や機能改善が期待できます。

<補足説明資料>
人工関節手術に伴う合併症

どのような手術にも危険(リスク)は伴います。合併症には手術中に起こるものや、手術後に起こるものがあります。手術を受ける際には、手術前の外来で既往歴(今までの病気や治療中の病気)や現在の体の状態の評価を行い、手術に対するリスクを評価します。リスクがある場合には、事前に治療を行うことで合併症が発生する確率を下げることが出来るように努めていきます。 

起こり得る合併症には以下のようなものが挙げられます。
手術中から術後早期の合併症 適切な手技で行う場合、全体で1−2%と考えられます

術中骨折

大腿骨側に多く、小さければ保存治療で、大きければワイヤリングやプレート・スクリュー固定を追加して治療します。

神経損傷

坐骨神経以外に大腿神経、閉鎖神経、上殿神経を障害することがあります。血腫や人工関節部品、筋鉤などでの圧迫、下肢延長、虚血、セメントによる熱損傷、関節脱臼などに起因します。治療法とその予後は原因しだいで異なりますが、多くは保存治療で改善します。

血管損傷

重大な合併症ですが極めて稀です。

静脈血栓症
・肺塞栓症
(エコノミークラス症候群)

術中・術後に下肢の静脈のなかで血液が凝固し(静脈血栓症)、それが肺に流れ込んで突然に呼吸困難を起こします(肺塞栓症)。肺塞栓死亡率は予防しなければ2-3%、抗凝固療法などで適切に予防すれば0.1%です。

感染症

抗菌剤を予防的に投与し、無菌手技で手術して予防します。コントロール困難な場合は創部を洗浄したり、人工関節を抜去せねばならないこともあります。

関節脱臼

大多数は股関節の屈曲・内転・内旋で生じる後方脱臼ですが、当院の手術法は脱臼しにくい前側方アプローチです。膝関節でも時に生じることがあります。

脚長差

手術時には脚の長さをなるべくそろえるようにします。
変形の度合いなどで、そろわない場合、インソールで合わせたりします。

異所性骨化

筋肉など軟部組織の中に骨ができてきます。骨化性筋炎とも言われます。鎮痛剤(NSAIDs)を適切に内服することが予防になります。

セメント固定
での血圧低下

主な原因は脂肪や骨髄による塞栓症とされ、セメントモノマーの毒性などが指摘されています。セメント固定する場合には細心の注意で確実な処置を行います。

遅発性合併症

骨融解・摩耗・ゆるみ

摩耗粉で骨がむしばまれる現象です。部品が微動し、人工関節がゆるんでずれたり、その周囲で骨折したりします。摩耗を生じにくい部品で予防し、定期検診で早期発見・早期治療に努めます。

人工関節部品
周囲での骨折

高齢化や骨粗鬆症の進行とともに頻度が増えています

部品の破損

金属疲労などで生じ得ますが、部材の改良により減少しました。

その他

手術中・手術後に輸血の可能性があります
通常の術中出血は100-400mL。輸血の可能性は10%未満です。
周術期の止血対策(トラネキサム酸の使用、低血圧麻酔など)によって術後輸血の頻度は少なくなっています。
術前の状態によっては自己血貯血を行います。

関節の痛みと人工関節に関するQ&A
どのような痛み?
股関節や膝周囲の痛みから、お尻や太もも、脚の各所の痛み
どのようなときに受診するのが良いの?
痛みや動きの制限で今まで通りに生活できないとき
人から歩き方や姿勢を指摘されたとき
受診時に行う検査は?
問診と診察、レントゲンで殆ど診断できますが、時にCTやMRI検査を行います
人工関節手術を受けた後、どのくらい良くなるのか?
手術前の動きの制限や筋力低下の程度により術後回復期間には差がでますが、強い痛みはなくなり、手術したことが分からないくらいまで回復する人が多くいます
手術は何歳まで受けられるのか?
全身麻酔の手術が受けられるくらい元気であれば、基本的に手術年齢に上限はありません
費用はどのくらいですか?保険はききますか?
保険割合などでかわりますが、すべて保険診療内であり、高額医療費の控除のも受けられます
保険割合などで自己負担は代わりますので、受診時にご相談ください。
何日くらいの入院が必要ですか?
世界的には数日以内での退院が一般的で、近年は日帰り手術も行われます。低侵襲な手術とともに、積極的に痛みや吐き気を抑え、術後早期からリハビリテーションを開始することで、殆どの患者さんが術後3日目までに杖歩行や階段昇降ができるようになります。当院では、患者さんの回復状況や生活スタイルによって1−2週間リハビリをしっかりと継続してから退院していただきます。
歩けるようになりますか?
手術翌日から歩行器や杖を使用して歩行訓練を開始し、術後数日で階段昇降、着替え、シャワー浴が可能となります。
手術前の状態や術後の回復状況で多少差はありますが、人工関節置換術後は痛みなく歩けるようになります。
退院するときに階段の歩行は可能ですか?
杖歩行、屋内独歩、階段昇降などを十分訓練し、ご自宅で困らない状態で退院します。
いつシャワーを浴びることができますか?
術後数日で防水の絆創膏を貼った状態でシャワー浴ができます。
回復にはどれくらいかかりますか?
個人差はありますが多くの場合、術後6週間程でほとんどの日常生活が可能となります。
術後3ヶ月までには,日常活動がよりスムースに行えるようになります。
車の運転はできますか? 
通常、術後4週程度で運転を許可しています。術側が左の場合にはもう少し早くなる可能性(2週間程度)があります。過去の報告では反射的な動き、対応の回復には6週程度かかるという報告があります。交通事故などの可能性もあるので十分な注意が必要です。
どれくらいで仕事復帰できますか?
仕事の内容や通勤方法などにもよります。コンピューター操作などの座って可能な仕事、いわゆるデスクワークであれば退院後直ぐに復帰できます。身体を使う仕事であれば、術後1−2ヶ月は休めると安心です。
術後薬を飲む必要がありますか? 
痛み止めを中心に、血栓予防のお薬などを服用します。手術後数日で痛みのピークは越えますが、人によっては数週間投薬を必要とすることがあります。術前の痛みとは異なり、解消していく痛みですので、痛みのある時期には十分に鎮痛薬を使用することが重要です。
術後、理学療法(リハビリテーション)は必要ですか?
術後は、ストレッチや臀部や大腿部の筋力訓練を行うことが望ましいです。入院中に理学療法士から自宅での訓練方法の指導を受けます。退院後は、御自身でリハビリを毎日継続して行うことが重要ですが、状況によっては外来通院でリハビリをすることも可能です。関節周囲の筋力増強訓練やストレッチなど
人工関節は空港でのセキュリティーチェック(金属探知機)に反応しますか?
90%以上の人工関節が金属探知に反応すると考えられます。原則、セキュリティー検査を受ける前に検査官に申し出てください。言葉で伝えるのが心配であれば、TSA’s Notification Card (TSAのホームページからダウンロードできます)を提示してください。これらのカードや証明書を提示したとしても、金属探知機によるセキュリティーチェックが免除されることはありません。ボディチェックに備え、手術創を見せやすい服装にしておくのが良いでしょう。
術後,できない運動はありますか?
人工関節を長持ちさせるために、ランニングやジャンプ動作を含む運動・競技に関しては、負荷や頻度を調整した方が良いと思われます。インプラントの破損や脱臼を避けるために、激しいコンバットスポーツやコンタクトスポーツは推奨できません。
術後の制限はありますか? (特に股関節の手術後)
使用したインプラントが体内で安定し、手術の創が落ち着くまで、術後6週間は過度な負担を避け、脱臼しやすい姿勢(脱臼肢位)を避けるよう指導します。術後6週間以降は、筋力が回復していれば特に制限は設けていません。
股関節手術後に避けて欲しい動作の例
・深くしゃがみ込む(更に捻る) ・股関節深く曲げて物を取る ・深々とした座礼
なぜ手術前に歯科受診が推奨されますか?
なぜ手術前に歯科受診が推奨されますか?
なぜ手術前に歯科受診が推奨されますか?
人工関節術後に必要となった歯科治療に関して、歯科処置前後の予防的な抗生剤の投与に明確な根拠はありません。しかし、人工関節周囲に感染を生じた場合の治療の大変さを考慮し、一定の侵襲を伴う処置(抜歯や歯肉や顎骨まで到達するもの)は、処置直前から抗生剤投与を受けて治療を受けて頂くことが望ましいと考えています。手術後に歯科治療を受ける予定になった場合には、担当医にご相談頂くことをお勧めします。

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